野生動物たちが安全に高速道路を渡るための橋は世界各国に設置され、効果を収めている | ニコニコニュース
野生動物にとって高速道路の横断は命がけ。運悪く車にぶつかれば一巻の終わりだが、どこかの時点で渡らない限り永遠に道の向こうには行けないのだ。
自動車の迅速な移動のために作られた高速道路は、人間の活動に不可欠なインフラだ。だが同時に野生動物の自由な移動の妨げにもなっている。
人間が決めた交通ルールなど知る由もなく、車がビュンビュン行き交う道路を渡ろうとしては事故に遭い、命を落とす動物たち。
「動物用の橋」はそんな悲しい事故を防ぐために考え出されたもの。ヨーロッパを皮切りに世界各国に広まりつつある特別な道とそれらを利用する動物たちの様子をみてみよう。
【画像】 人間の移動に便利な高速道路。でも野生動物にとっては?
迅速で安全な移動を叶える高速道路は人間にとって非常に便利なインフラだ。
網の目のように張り巡らされた高速道路を使えば、鬱蒼とした森を縦断し、山を貫く最短コースで目的地を目指せる。
一方、森や山にいる動物は高速道路をどう思ってるのだろう。
行く手を阻むやっかいな障害物?いきなり轢かれるデンジャラスゾーン?夜中も明るくいつもうるさい謎のエリア?とかだろうか。
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高速道路は人間が使う道の一つだ。でもその周辺で暮らす動物は、人工の道と車に毎日悩まされているかもしれない。
「動物の生息地の維持」と「あらゆる種類の生き物の命を救う」橋
ニュージーランドの環境科学者で、道路と交通による生態学的影響を研究したイアン・F・スペラーバーグ氏は、アメリカの生態系の5分の1に道路の影響があるだろうと述べている。
また経済的な損失も著しく、動物との自動車の衝突事故には年間80億ドル(約1兆1千500億円)かかるという試算もある。
動物に関する交通ルールなら特定の地域で見かける「鹿横断注意」などの標識もあるが、その程度の対策では不十分だ。
「動物の生息地の維持」と「あらゆる種類の生き物の命を救う」意味でも、これらの陸橋やトンネルはきわめて重要になる。
ヨーロッパや北米など世界各地にある動物の橋
動物にも専用の道を作ろうという発想は1950年代にフランスで始まった。以来ヨーロッパでは動物用の橋がしょっちゅう建設されている。
野生生物を保護する橋はオランダ国内に66か所もある
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下はベルギーにある動物用の橋
こちらはドイツの橋
北米やカナダもその影響を受け、30年ほど前から橋の建造に着手。現在では橋とトンネルにもさまざまな形やサイズがあり、各生態系に合わせて設計される。
アメリカのモンタナ州の橋
カナダの国立公園では車と動物の事故が80%も減少!
にしても利用率はどれぐらいなんだろう?肝心の動物は本当に使ってるのか?
そんな疑問に応じるように、カナダの政府機関パークス・カナダは実際に高速道路をわたる動物を調査しており、その記録なども公開している。
結論からいうと、現地の動物専用橋は大好評!鹿やムースやオオヤマネコなど、さまざまな動物が便利な道を渡っているもよう。
その例の一つ、広大なカナダのバンフ国立公園内にも動物のための道がある。
高速道路の上を渡る動物用の橋が6つ、高速道路の下をくぐるトンネルが38か所もあるのだ。
この公園では動物の映像を過去5年にわたり保存しているが、この道ができてから高速道路上での野性動物と車の衝突事故が80%も減少したという。
用心深いオオヤマネコも。15年で15万匹以上が利用
長年かけて集めた映像は非常に興味深く、各動物の生態などもうかがえる。
たとえばこの橋を一番最初に渡ったのは好奇心旺盛な鹿だった。一方、慎重なハイイログマはここを渡るまで6、7年かかったが、今は家族連れでやってくるほど慣れてきたそうだ。
ハイイログマやオオカミやムースは広く開放的な橋を選び、ピューマやブラックベア(アメリカクロクマ)は地下道など遮蔽された通路を好む。
そしてクズリやオオヤマネコのように用心深い動物もこっそりこの道を通っているという。
なおこの公園では、15年以上にわたる調査やモニタリングから、これまでになんと15万匹以上の動物が安全に高速道路を渡っていることが判明したという。
バンフ国立公園で動物専用道路を渡る動物たち(※写真パラパラ注意)
A Wild Way to Move - Banff National Park [contains flashing images]
動物の間でも「ここに新しい道があるよ!」「もうあっち通らなくてもいいやん!」なんて噂になったりするのかな?
そこで暮らす動物が安全に往来できる橋。これからももっと増えるといいな。
References:twistedsifterなど /written by D/ edited by parumo
(出典 news.nicovideo.jp)
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